貧血の逆多血症とは?症状や種類を医師が解説
- 2025年10月5日
- お知らせ
血液中のヘモグロビン濃度が低い状態が貧血だとすれば、その反対の状態はどのようなものでしょうか。
もしかしたら、健康診断で血液検査の結果に異常が見つかり、その意味が分からず不安を感じている方もいるかもしれません。
そこで、今回は、貧血の反対の状態について、その名称や症状、種類、そして健康への影響について解説します。
貧血の反対は多血症
多血症とは赤血球増加症のこと
貧血の反対の状態は、一般的に「多血症」と呼ばれます。
多血症とは、血液中の赤血球数やヘモグロビン濃度が通常よりも高い状態を指します。
正確には、赤血球増加症と呼ばれる疾患群の総称なのです。
血液中に赤血球が過剰に存在することで、血液の粘度が増加し、様々な症状を引き起こす可能性があります。
血液を構成する成分のうち、特に赤血球の増加が顕著なため、赤血球増加症とも呼ばれます。
また、この状態は、血液検査におけるヘモグロビン濃度やヘマトクリット値の上昇によって診断されます。
ヘモグロビン濃度は血液1dLあたりのヘモグロビンの量を示し、ヘマトクリット値は血液全体に占める赤血球の割合を示します。
さらに、これらの値が基準値よりも高い場合、多血症が疑われます。
ヘモグロビン濃度やヘマトクリット値の上昇で診断される
ヘモグロビン濃度やヘマトクリット値の上昇は、多血症の重要な診断指標です。
しかし、これらの値だけで多血症と断定できるわけではなく、他の血液学的検査や身体診察の結果を総合的に判断する必要があります。
例えば、白血球や血小板の数、血液の粘度なども検査項目に含まれます。
これらの検査結果を総合的に分析することで、多血症の種類や原因を特定し、適切な治療方針を決定することが可能となります。
また、患者さんの年齢や性別、既往歴、症状なども考慮されます。
そのため、医師による丁寧な診察が不可欠といえます。
多血症にはどんな種類がある?
相対的多血症と絶対的多血症
多血症には、大きく分けて「相対的多血症」と「絶対的多血症」の2種類があります。
相対的多血症は、血液中の水分が減少することで相対的に赤血球の濃度が高く見える状態です。
脱水症状などによって起こることが多く、実際には赤血球の数自体は増加していません。
一方、絶対的多血症は、骨髄で赤血球が過剰に生産されることによって血液中の赤血球数自体が増加している状態です。
さらに、この絶対的多血症は、原因によって真性多血症と二次性多血症に分類されます。
真性多血症とは血液細胞が増加する病気
真性多血症は、骨髄の造血幹細胞の異常によって赤血球だけでなく、白血球や血小板も増加する病気です。
遺伝的な要因や後天的な要因が考えられていますが、その詳細な発症メカニズムは未だ解明されていない部分も多く残されています。
また、この病気は、血液の粘度の上昇による様々な症状を引き起こすだけでなく、血栓症などの重篤な合併症のリスクも高めます。
そのため、早期診断と適切な治療が重要なのです。
二次性多血症とは別の原因で生じる多血症
二次性多血症は、真性多血症とは異なり、他の疾患や状態を原因として起こる多血症です。
例えば、肺疾患、心臓疾患、腎臓疾患、腫瘍など様々な病気が二次性多血症を引き起こす可能性があります。
これらの疾患によって赤血球産生を促進する物質が過剰に産生されたり、酸素供給が不足したりすることで、骨髄が赤血球を過剰に生産するようになります。
そのため、二次性多血症の治療においては、まず原因疾患の治療が優先されます。
多血症の症状
頭痛やめまい
多血症では、血液の粘度が高くなるため、脳への血流が滞りやすくなり、頭痛やめまいが起こることがあります。
頭痛は、慢性的な持続性頭痛や、突然起こる激しい頭痛など、様々なパターンで現れる可能性があります。
また、めまいは、回転性めまい、ふらつきなど、症状も様々です。
さらに、これらの症状は日常生活に大きな支障をきたす可能性があり、放置すると重篤な状態に発展する可能性もあります。
息切れや動悸
血液の粘度が高いと、心臓は血液を全身に送り出すのにより多くの負担がかかります。
そのため、息切れや動悸といった症状が現れることがあります。
息切れは安静時でも起こることがあり、運動時や階段昇降時などにはさらに悪化することがあります。
また、動悸は心臓の鼓動が速くなったり、不規則になったりする感覚です。
そして、これらの症状は生活の質を著しく低下させる可能性があります。
顔面紅潮
多血症では、顔面紅潮(顔が赤くなる)が起こることがあります。
これは、血液の循環が亢進し、皮膚の毛細血管に血液が充満するためです。
顔面紅潮は、特に気温が高い環境や運動後などに起こりやすくなります。
この症状は見た目にも分かりやすく、本人も周囲の人も気づきやすい症状といえます。
血栓症リスクの増加
血液の粘度が高い状態は、血栓症のリスクを増加させます。
血栓症とは、血液が固まって血栓が形成されることで血管が詰まる病気です。
血栓が脳の血管を詰まらせると脳梗塞、心臓の血管を詰まらせると心筋梗塞を引き起こします。
また、血栓症は生命に関わる重篤な合併症です。
そのため、多血症の患者は定期的な健康診断を受け、血栓症予防に努めることが重要となります。
まとめ
今回は、貧血の反対の状態である多血症について解説しました。
多血症は、血液中の赤血球数やヘモグロビン濃度が上昇する状態であり、相対的多血症と絶対的多血症に分類されます。
絶対的多血症には真性多血症と二次性多血症があり、それぞれ原因や症状が異なります。
多血症は、頭痛やめまい、息切れ、顔面紅潮などの症状を引き起こし、血栓症のリスクも高めます。
そのため、早期発見と適切な治療が重要です。
もし、これらの症状に心当たりがある場合は、速やかに医療機関を受診することをお勧めします。