好中球とリンパ球役割と働き方の違いを解説!血液検査値の見方も紹介
- 2025年9月27日
- お知らせ
私たちの体には、様々な病原体から身を守る免疫システムが備わっています。
その中で、重要な役割を担っているのが好中球とリンパ球という2種類の白血球です。
どちらも免疫細胞として働きますが、その働き方には明確な違いがあります。
今回は、好中球とリンパ球の機能の違い、そして血液検査値との関連性について解説します。
好中球とリンパ球の違い
好中球は自然免疫の中心的役割
好中球は、体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物をいち早く認識し攻撃する、自然免疫の主要な担い手です。
自然免疫とは、生まれつき備わっている非特異的な免疫反応です。
これは、特定の病原体に対してのみ反応する獲得免疫とは対照的といえます。
好中球は血液中を循環しており、炎症部位に素早く移動し、異物を貪食(食作用)することで排除します。
また、この貪食作用は、好中球が持つリソソームという細胞小器官内の酵素によって行われ、異物を分解・消化します。
さらに、その過程で、好中球自身も死滅することが多く、膿として排出されるのです。
リンパ球は獲得免疫の中心的役割
一方、リンパ球は獲得免疫の中心的役割を担っています。
獲得免疫は、一度感染した病原体に対して、より特異的に、そして効率的に反応できる免疫システムです。
リンパ球には、B細胞、T細胞、NK細胞など様々な種類があり、それぞれ異なる役割を持っています。
例えば、B細胞は抗体というタンパク質を産生し、病原体を無効化します。
また、T細胞は、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を直接攻撃する細胞傷害性T細胞と、B細胞や他の免疫細胞を活性化するヘルパーT細胞などに分類されます。
さらに、NK細胞は、自然免疫と獲得免疫の両方の性質を持ち、ウイルス感染細胞やがん細胞を直接攻撃します。
好中球は主に細菌感染に反応
好中球は、主に細菌感染症に対して強く反応します。
細菌感染が起こると、好中球の血液中濃度は急激に増加し、炎症部位に集まって細菌を貪食します。
そのため、血液検査で好中球の数が増加している場合は、細菌感染症の可能性が高いと判断することができます。
また、好中球の増加は炎症反応の指標ともなり、感染の重症度を評価する上でも重要な情報となります。
さらに、好中球の機能低下は、免疫不全につながる可能性があり、注意が必要です。
リンパ球はウイルスや腫瘍細胞など幅広く反応
リンパ球は、ウイルス感染症、腫瘍、アレルギーなど、より幅広い疾患に関与します。
ウイルス感染では、リンパ球がウイルスを認識し、抗体産生や細胞傷害作用によって排除します。
また、がん細胞に対しても、リンパ球が攻撃し、増殖を抑える働きをしています。
さらに、リンパ球は免疫記憶に関与しており、一度感染した病原体に対して迅速な反応を示すことができます。
好中球とリンパ球の働き方の違いは?
好中球は食作用で異物を排除
好中球は、その名の通り、貪食作用(食作用)によって異物を排除します。
好中球は異物を細胞内に取り込み、リソソーム内の酵素を使って分解・消化します。
このプロセスは迅速で初期の感染防御に重要な役割を果たします。
さらに、好中球は炎症性サイトカインを放出し、他の免疫細胞を活性化させる役割も担っています。
リンパ球は抗体産生や細胞傷害で異物を排除
リンパ球は、抗体産生や細胞傷害作用など、より特異的な方法で異物を排除します。
B細胞は、抗体を産生して病原体を無毒化したり、貪食細胞による攻撃を容易にします。
また、T細胞は、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を直接攻撃します。
これらの作用は、感染の初期段階だけでなく、感染後期や再感染時にも重要な役割を果たします。
さらに、リンパ球は免疫記憶を形成し、長期的な免疫応答を維持する役割も担っています。
好中球は炎症反応の初期段階で活躍
好中球は炎症反応の初期段階で重要な役割を果たします。
炎症は、体への損傷や感染に対して生じる防御反応です。
好中球は炎症部位に集まり、損傷を受けた組織を修復し、病原体を排除します。
また、好中球は炎症性メディエーターを放出し、炎症反応を増幅させる役割も担っています。
リンパ球は感染後期や再感染時に効果を発揮
リンパ球は、感染後期や再感染時に効果を発揮します。
一度感染した病原体に対する免疫記憶を保持し、再感染時にはより迅速かつ効率的に反応します。
これは獲得免疫の特徴です。
また、リンパ球は抗体産生を通じて、長期間にわたる免疫を提供します。
好中球とリンパ球の血液検査値の見方
好中球増加は細菌感染症を示唆
血液検査で好中球の数が増加している場合は、細菌感染症の可能性を示唆します。
しかし、他の炎症性疾患でも増加することがあるため、単独で診断することはできません。
そのため、他の検査結果や臨床症状と合わせて総合的に判断する必要があります。
リンパ球増加はウイルス感染症を示唆
リンパ球の数が増加している場合は、ウイルス感染症や一部の細菌感染症、あるいはリンパ系の疾患の可能性が考えられます。
例えば、伝染性単核球症ではリンパ球数が顕著に増加することがあります。
また、リンパ性白血病などの悪性疾患でも増加が見られることがあります。
好中球減少は免疫力低下を示唆
好中球数が減少している場合は、免疫力の低下を示唆し、細菌感染症にかかりやすくなります。
これは、骨髄の機能低下や薬剤の影響などが原因として考えられます。
また、重症の感染症や自己免疫疾患でも好中球減少が見られることがあります。
リンパ球減少も免疫力低下を示唆
リンパ球数が減少している場合も、免疫力の低下を示唆します。
これは、ウイルス感染症、免疫不全症候群、薬剤の影響などが原因として考えられます。
例えば、HIV感染症ではリンパ球数が減少することが知られています。
また、放射線治療や化学療法などの影響でリンパ球が減少することもあります。
まとめ
好中球とリンパ球は、共に重要な免疫細胞ですが、その働き方や関与する疾患は異なります。
好中球は自然免疫の主要な担い手であり、細菌感染への初期防御に重要な役割を果たします。
一方、リンパ球は獲得免疫の担い手であり、ウイルス感染や腫瘍など、より幅広い疾患に関与します。
血液検査でこれらの細胞数の変化を見ることで、感染症や免疫状態を評価することができます。
これらの細胞の機能と血液検査値を理解することは、健康管理において重要な知識となります。